当院におけるホルモン補充療法(HRT)について

女性のからだは女性ホルモン(エストロゲン)の影響を受けており、ライフステージによってその分泌量が大きく変化します。
特に、エストロゲンの分泌量が大きくゆらぎながら減少する更年期(45歳~55)は心身にさまざまな症状が現れることがあり、これらを総称して「更年期症状(障害)」と呼びます。
さらに、閉経後数年を経過すると骨粗しょう症や動脈硬化など生活習慣病のリスクが高くなります

現在、ホルモン補充療法(HRT)に使用できる薬剤の選択肢が広がり、更年期障害に対してより安全な治療が行える時代になりました。
当院では、今後HRTを積極的に行っていこうと考えております。

ホルモン補充療法(HRT)とは・・・
欠乏したエストロゲンを飲み薬貼り薬塗り薬として体内に補充する治療法です。
体内のエストロゲン量を維持することによって、更年期におけるさまざまな症状を軽減します。

天然型のエストロゲン天然型の黄体ホルモンの薬の組み合わせで治療ができます。(保険適応です)
子宮がある方には、エストロゲンに加えて子宮体がんを予防する目的で黄体ホルモンを併用します。

天然型:女性の卵巣でつくられるものと同じ成分の薬
合成型:吸収しやすくするなどの目的で天然型をつくりかえた薬

特に、天然型の黄体ホルモンの薬は産婦人科医が待ち望んでいた薬です
乳がんのリスクが上がらない安全なHRTを行えます
また、良質な睡眠が得られるなどのメリットがあります。
(フランスでは1980年に、アメリカでは1998年に承認され、それに遅れること20年以上、ようやく日本に導入された薬であり、海外では広く使われています)

※いわゆるプラセンタ療法は更年期障害に対するHRTの代用にはなりません。
(ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版-日本産科婦人科学会・日本女性医学学会編集/監修 CQ502より抜粋)

<HRTで期待される効果>
①骨量を維持し骨粗しょう症を防ぐ
②動脈硬化を防ぐ
③のぼせやほてり、発汗などの症状を改善する
④皮膚のコラーゲンを増やし、肌のうるおいを保つ
⑤意欲や集中力の低下を回復させ、気分の落ち込みを
やわらげる
⑥性器の萎縮やおりものの減少で起こる腟炎や性交痛を
改善する

<よくある質問>
(1)乳がんや子宮がんの心配は??
HRTの副作用として乳がんや子宮体がんのリスクを心配される方がいらっしゃいますが、黄体ホルモンを併用することで子宮体がんのリスクはHRTをしていない方と変わりません。また、乳がんのリスクに及ぼすHRTの影響は小さいと考えられています。
5年未満の治療期間であれば、乳がんリスクの上昇は認められていません。
5年以上の治療期間であっても、リスクの上昇は飲酒や肥満などによるリスクの上昇と同じかそれ以下です。
乳がんのリスクは併用される黄体ホルモンの種類とHRTの治療期間に関連していますが、HRTを中止すればHRTを行っていない方と同程度になります。
(ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版より抜粋)

(2)HRTはいつまで続けるの??
更年期が過ぎ、症状が改善すればHRTを終了することができます。しかし、終了後にまた症状が戻る場合もあります。
HRTは更年期障害の治療を主な目的として行いますが、骨粗しょう症や動脈硬化、皮膚萎縮などに対する予防効果がありますので、そのまま治療を続けることもできます。
ご自身のからだの状態を確認し、医師とよく相談しながら続けるかやめるか決めていきましょう。


日本人女性の平均寿命も87歳を超えてきました。
これからは、この長い人生を自分らしく健康に過ごすための知恵が求められています。
更年期は自分らしく生きるための新たなスタート地点です。
明るく前向きに歩んでいけますように、少しでもお力になれたらと思います。

治療の詳細は外来にて医師までお気軽にご相談ください。

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